ハクビシンによる健康被害等

ハクビシン

ハクビシンが自分の住宅などに住み着かれた場合の建物被害や、畑などをしていた場合による農作物の被害などは前述のとおりです。しかし、ハクビシンの被害は物的損害だけに留まりません。ハクビシンの持つ様々な要因により、品減に対しての健康被害も発生するのです。ここでは、想定される健康被害についてご説明したいと思います。

●感染症

ハクビシンが住居に巣を作り糞尿をすることで、そこが感染症を引き起こす寄生虫の発生源になることがあります。この動物が媒介する病気はSARSだけではありません。他にも、トキソプラズマ、レプトスピラ症、サルモネラ症、E型肝炎などがあります。これらは感染し発症すると命にかかわることもある病気です。なお、感染しても自覚症状がないことも多いです。ここでは、、様々な感染症についてご説明したいと思います。

1. SARS

SARSは“Severe Acute Respiratory Syndrome”の略で、日本語では『重症急性呼吸器症候群』と訳されます。 SARSは、新型のコロナウイルスである『SARSウイルス』が原因である新しい感染症です。主な症状としては、発病時において38℃以上の発熱・悪寒・筋肉痛・乾燥咳・頭痛などきわめてインフルエンザに類似している特徴があります。また、喀痰、下痢といった症状も比較的多くの人にあらわれます。
発病して1週間程度すると、肺炎の症状が現れ始め、胸部レントゲン写真では、肺炎または呼吸窮迫症候群(ARDS)の所見が見らます。2週間目に入ると、ステロイドや抗菌薬の投与によって一旦解熱したように見えた症状も、再び発熱することもあります。またこの時期、水様性の下痢症状を呈す場合もあります(約50%)。多くの場合、この後症状が改善し回復に向かいますが、10~20%の方が呼吸不全など重症化すると言われています。
ハクビシンより感染すると、次は人から人へと感染します。感染経路は濃厚な接触、あるいは、飛沫感染(患者が咳やくしゃみなどをした際に飛び散るウイルスを吸い込むことによる感染)が主な感染経路だと考えられています。ウイルスやそれを含んだものに触れた手指や物を介した感染(接触感染)、排泄物に触れた手を介した感染(経口感染)、特別な条件下での空気感染なども完全に否定することはできませんが、可能性はかなり低いと考えられています。
感染性については、症状が無い時期には、他の人への感染力は無いか、またはきわめて低いと考えられています。また現在までのところ、解熱してから10日以上経過した人から、他の人に感染したという報告はありません。治療法は、ワクチンの研究・開発は行われていますが、実用化されたワクチンはまだありません。基本的に、手洗い、咳・くしゃみなどの症状のある人が、マスクを使用することが最も重要です。
一般的には、手洗いの励行など個人衛生に気をつけること、体力や免疫力の強化、十分に睡眠をとり過労をさけることなどがあげられます。消毒法は、SARSコロナウイルスの消毒はそれ程困難ではありません。熱に極めて弱く、80℃10分で失活(活性が失われること)してしまいます。アイロンがけも有効です。また、紫外線に弱いので日光に干すあるいは、紫外線照射をすることも有効です。また、70~80%の消毒用アルコール、グルタールアルデヒド、界面活性剤なども有効です。これらを使用するときには、消毒するものや、場所、場面などで使い分けることが必要です。

2. トキソプラズマ

トキソプラズマ症は、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)というアピコンプレクサに属する一属一種の寄生性原生生物(原虫)により起こされる感染症です。トキソプラズマはほぼ全ての温血脊椎動物(哺乳類・鳥類)に感染能を持っています。一度感染すると終生免疫が継続するが、感染率は国・地域・年齢によって異なります。食肉習慣やネコの抗体保有率、衛生状態などが複雑に関連すると考えられます。
ブラジル、フランスなどで感染率が高い傾向にあります。世界的に見ると全人類の1/3以上(数十億人)が感染しているとされるなど非常に広く蔓延していることが知られています。健常者が感染した場合は、免疫系の働きにより臨床症状は顕在化しないか軽度の急性感染症状を経過した後で、生涯にわたり保虫者となります。しかし、HIV感染患者などの免疫不全者には重篤な症状を引き起こすため、十分な注意が必要です。
また、妊娠中の女性が感染することにより起こる先天性トキソプラズマ症は、死産および自然流産だけではなく児に精神遅滞、視力障害、脳性麻痺など重篤な症状をもたらすことがあります。治療法としては、2012年11月現在、海外で使用されるピリメタミンやスルファジアジンなどは日本では未承認となっています。また、スピラマイシンの類薬であるアセチルスピラマイシンなどの国内承認薬もトキソプラズマ症が適応症となっていません。そのため、適応外使用や個人輸入により治療が行われており、今後国内での開発が期待されています。

3. レプトスピラ症

ワイル病、秋やみなどに代表されるレプトスピラ症(leptospirosis)は、病原性レプトスピラ感染に起因する人獣共通の細菌(スピロ ヘータ)感染症です。病原性レプトスピラは保菌動物(ドブネズミなど)の腎臓に保菌され、尿中に排出されます。ヒトは、保菌動物の尿で汚染された水や土壌 から経皮的あるいは経口的に感染します。1999 年4 月に施行された感染症法では、レプトスピラ症は届け出疾患に含まれていません。治療・予防については、軽~中等度のレプトスピラ症の場合には、ドキシサイクリンの服用が勧められている。
重度の症状の場合は一般にペニシリンによる治療が行われます。他のスピロヘータ感染と同様に、レプトスピラ症の治療にペニシリンを用いた場合はJarisch‐Herxheimer 反応(抗菌薬投与後に起こる、破壊された菌体成分によるとみられる発熱、低血圧を主症状とするショック)がみられることがありますので、静注投与を受けた患者の観察が必要とされています。レプトスピラ症の予防として、現在日本では、血清型copenhageni,australis, autumnalis, hebdomadis の4血清型の全菌体ワクチンが製造されています。
しかし、レプトスピラに対する免疫は血清型に特異的であるとされており、ワクチンに含まれていない血清型の感染に対する予防効果は不明となっています。また薬物予防として、ドキシサイクリンの効果が報告されています。東南アジアでは、レプトスピラ症の流行は多雨期から収穫期(7~10月頃)に集中することが疫学的に確認されている。レプトスピラ症の流行地域では不用意に水に入らないこと、特に洪水のあとには絶対に入らないことが予防には重要となっています。

4. サルモネラ症

サルモネラ感染症の原因菌はサルモネラ(Salmonella enterica )です。サルモネラはその中が2,000種類以上の血清型に細分されており、チフス性疾患をおこすチフス菌およびパラチフス菌も含まれるますが、ここではヒトに胃腸炎、つまり食中毒の原因となるサルモネラについてのみご説明します。日本におけるサルモネラの食中毒事例はここ数年間常に、腸炎ビブリオと一、ニを争う代表的食中毒原因菌となつています。
サルモネラの食中毒はカンピロバクターと同様大型の事例が多く、学校、福祉施設、病院で多発しています。その血清型との関係では、1980 年後半からS .Enteritidis が鶏卵関連食品が原因で急増してきました。また、多剤耐性のS .Typhimurium DT105 の発生は世界的にその予防対策が公衆衛生上の大きな問題になっており、多くはありませんが、日本においても本菌の発生が見られます。サルモネラは健康な成人ではその症状が胃腸炎にとどまるりますが、小児や高齢者では重篤となることがあります。
治療・予防としては、サルモネラのみならず細菌性胃腸炎では、発熱と下痢による脱水の補正と腹痛など胃腸炎症状の緩和を中心に、対症療法を行うのが原則です。強力な止瀉薬は除菌を遅らせたり麻痺性イレウスを引き起こす危険がありますので、使用しません。解熱剤はニューキノロン薬と併用禁忌のものがある上、脱水を悪化させる可能性 がありますのでできるだけ使用を避ける方が良いでしょう。抗菌薬は軽症例では使用しないのが原則です。

5.E型肝炎

E型肝炎はE型肝炎ウイルスの感染によってひき起こされる急性肝炎で、かつて経口伝播型非A非B型肝炎と呼ばれた疾患です。非A非B型肝炎といえば、欧米諸国ではC型肝炎を意味しますが、発展途上国では大部分はE型肝炎であるといわれています。E型肝炎はE型肝炎ウイルスの感染によってひき起こされる急性肝炎で、かつて経口伝播型非A非B型肝炎と呼ばれた疾患です。非A非B型肝炎といえば、欧米諸国ではC型肝炎を意味しますが、発展途上国では大部分はE型肝炎であるといわれています。
A型肝炎と類似しており、腹痛、食欲不振、全身倦怠、発熱、悪心、嘔吐、黄疸、尿が黄色くなるなどの症状があります。血液検査では肝臓の機能障害を反映してGOT、GPT、LDHの上昇(数百~数万単位)、総ビリルビンの上昇、γGTP、ALPの上昇が、それに、アルブミン、コレステロール、コリンエステラーゼの低下などがみられます。
A型肝炎と同様、経口感染しますが、潜伏期が15日~50日(平均40日)とやや長く(A型肝炎:平均30日)、罹患年齢がより高く15~40歳に好発します。一般に予後は良好で、慢性化することはありませんが、重症化の頻度はA型肝炎に比べて高く、死亡率は1~2%で、とくに妊婦は劇症化しやすく、死亡率が17~33%と報告されています。

このように、ハクビシンを経由して発症する感染症は重篤な症状をもちらすものも多く含まれるため、非常に注意する必要があると言えるでしょう。

・ノミ・ダニ

ハクビシン自身が外からダニ・ノミを体に付けて家の中に入るため、不衛生な環境になってしまいます。ダニ・ノミに刺された時の痒さは耐え難いものであり、完治するのも時間がかかります。高齢者や小さな子供には特に被害が拡大する可能性があることから、注意する必要があります。

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